エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
とある河川敷の界隈に集まる連中は、いわゆる世間で言われる『ホームレス』と呼ばれる路上生活者たちだ。
私のようにベニヤ板や段ボールで土台を作りビニールシートでそれを囲んだ『ビニールハウス』を築いて城とする者もいれば、定住はせずに段ボール片手に毎日の様に移動して回る者もいる。
なかには車上生活者もいて一口にホームレスと言ってもその生活形態は一人一人違っていたが、共通するのはやはり“世捨て人”という事。
それは世を捨てたのではなく、もう捨てるモノが何もないというのが正しい様な気がする。
現に私にはこれ以上失うモノなど何もない。
その昔、交通事故で息子を亡くしてから幸せという袋に穴が開いてしまったのか、妻、仕事と次々と消えて無くしてしまった。
私はそれらを回収しようとせずに流れ流れてココに来た。
ここではフルネームは何の意味もないので私は勲(いさむ)と名乗っていたが、いつのまにかみんなが“サム”と呼ぶようになっていた。
勇がここに来て9日。
サムの子の勇は皆の心も明るく照らしていた。
私のようにベニヤ板や段ボールで土台を作りビニールシートでそれを囲んだ『ビニールハウス』を築いて城とする者もいれば、定住はせずに段ボール片手に毎日の様に移動して回る者もいる。
なかには車上生活者もいて一口にホームレスと言ってもその生活形態は一人一人違っていたが、共通するのはやはり“世捨て人”という事。
それは世を捨てたのではなく、もう捨てるモノが何もないというのが正しい様な気がする。
現に私にはこれ以上失うモノなど何もない。
その昔、交通事故で息子を亡くしてから幸せという袋に穴が開いてしまったのか、妻、仕事と次々と消えて無くしてしまった。
私はそれらを回収しようとせずに流れ流れてココに来た。
ここではフルネームは何の意味もないので私は勲(いさむ)と名乗っていたが、いつのまにかみんなが“サム”と呼ぶようになっていた。
勇がここに来て9日。
サムの子の勇は皆の心も明るく照らしていた。