エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
私はすぐにでも入っていって

「勇。貸してみなさい。ソレは電源が入ってないんだよ。」

と教えてやればいい。

「電源を入れるにはココを長押しするんだよ!」

そう教えてやればいい。

そしたら勇は連絡が取れて、帰るべき場所に帰る事が出来るのだろう。

しかし、弱い私はそれを後一日、後一日と先延ばしにしている。

それはまるで、飼い主がみつかった子犬を「返したくない」とだだを捏ねる子供と同じだ。

でも本当に後一日、後一日で時が過ぎていく。

もし、勇が自分から使い方を聞いてきた時は教えてやろう。

私は何も見てないし、知らなかったのだと自分に言い聞かせた。


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