エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
たまらずに美佐子が部屋で酒をあおっているとしばらくして黒沢が戻って来た。
「とりあえず、薬でおとなしくなりましたが…どうします?」
「……そうね。もうどうせ医者としては使い物にはならないだろうし、人間的にもどうかしら…破壊してるわ!」
黒沢は先程の出来事を思いだしながら、
「そうですね。なんかもう一線越えたというか、あれには驚きました…。」
美佐子は飲みかけのビールを黒沢に手渡し、それを飲む様に目配せすると
「不様なM男は真っ平ゴメンよ!」
と言い放った。
黒沢は一気にそれを飲み干すと
「ですね!それに俺は痛いのは苦手だな。」
と軽く笑った。
「じゃあ 気持ちイイ事なら どう!?」
美佐子から黒沢にキスをしたので、黒沢もそれに応じて美佐子を抱き締めた。
「……いいっすね〜♪」
しかし、美佐子は心の中で
(本当はシン。あなたの苦痛に歪む顔が見てみたいわ。)
と訴え、新たに沸いてきた欲望をどうにか押さえていた。