エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
《望の出来事》
その日、望はいつもの様に近所のスーパーで買い物をしていた。
相変わらず、黒沢たちの見張りは解かれる事なく続いているので、子供たちの情緒不安が気になり、長男は友人宅に、長女も実家に身を寄せてもらっている。
ちょうど夏休みなので良かったと思うしかない。
しかしこのままずーっとこれが続いたら、私たち夫婦も精神に異常をきたしそうだ。
一体、この監視はいつまで続くのだろうか…。
そんな事を考えながらだったので、余計に夕飯のメニューが決まらずに乾物コーナーで足を止めている所に突然、真後ろに来た若い女性に声を掛けられた。
「谷川 望さんですね? 見張りに気付かれるとマズイのでこのまま背中合わせに会話していただけますか?」
望は突然の申し出に振り返りそうになるのを堪えて、とりあえず
「ええ、分かったわ。でもアナタは誰!?」
なにげなくカレー粉を選ぶフリして背後の女に答えた。
その女も、調味料を次々に品定めするフリで
「ハイ。私は和田 梓と言います。中条氏の入院されていた病院でナースをしていました。氏の最後に預かったものを渡したくてアナタを探したのですが、スゴい見張りがついているので驚きました。でもここで長話は危険なので、明日、駅前のレディーススパで会ってお話し出来ませんか!?」
望は『中条』の言葉にドキッとして、確かにこの女性の提案通り、レディーススパなら見張りが男性なので多少時間稼ぎになると思い
「分かった。明日行くわ。」
と応じた。
その日、望はいつもの様に近所のスーパーで買い物をしていた。
相変わらず、黒沢たちの見張りは解かれる事なく続いているので、子供たちの情緒不安が気になり、長男は友人宅に、長女も実家に身を寄せてもらっている。
ちょうど夏休みなので良かったと思うしかない。
しかしこのままずーっとこれが続いたら、私たち夫婦も精神に異常をきたしそうだ。
一体、この監視はいつまで続くのだろうか…。
そんな事を考えながらだったので、余計に夕飯のメニューが決まらずに乾物コーナーで足を止めている所に突然、真後ろに来た若い女性に声を掛けられた。
「谷川 望さんですね? 見張りに気付かれるとマズイのでこのまま背中合わせに会話していただけますか?」
望は突然の申し出に振り返りそうになるのを堪えて、とりあえず
「ええ、分かったわ。でもアナタは誰!?」
なにげなくカレー粉を選ぶフリして背後の女に答えた。
その女も、調味料を次々に品定めするフリで
「ハイ。私は和田 梓と言います。中条氏の入院されていた病院でナースをしていました。氏の最後に預かったものを渡したくてアナタを探したのですが、スゴい見張りがついているので驚きました。でもここで長話は危険なので、明日、駅前のレディーススパで会ってお話し出来ませんか!?」
望は『中条』の言葉にドキッとして、確かにこの女性の提案通り、レディーススパなら見張りが男性なので多少時間稼ぎになると思い
「分かった。明日行くわ。」
と応じた。