エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
《勇の出来事》
勇はその日、食料の調達から戻ってきたサムの様子がおかしい事にすぐに気付いた。
人一倍繊細で観察眼のある勇は人の心の揺れにとても敏感だ。
実は、サムは悩んでいた。
今の生活で一番の天敵が災害だ。
もちろん、誰だって災害には遭いたくない。避けて通りたい。
しかし、今度の台風はどうやら避けられない。
関東に向って来てるのだから…。
するとこの慣れ親しんだお城ともおさらばだ。
折角色んな廃材を集めて作ったビニールハウスだが、それが台風の前では為す術もない。
いよいよ近づいてきたら最寄り品だけを持って逃げなければならない。
しかし本当のところは勇の事を悩んでいるのだ。
まさか勇までを危険にさらす事は出来ない。
とすればいよいよ今夜でお別れだ。
明日には親元に返してやらねば……。
そうなると今夜が最後の晩餐だ。
そう思って今日はありとあらゆる自分のシマを回って御馳走を調達してきたのだ。
「さあ 勇。晩ご飯だぞ!」
努めて明るい声でサムが勇を手招きした。
勇はその日、食料の調達から戻ってきたサムの様子がおかしい事にすぐに気付いた。
人一倍繊細で観察眼のある勇は人の心の揺れにとても敏感だ。
実は、サムは悩んでいた。
今の生活で一番の天敵が災害だ。
もちろん、誰だって災害には遭いたくない。避けて通りたい。
しかし、今度の台風はどうやら避けられない。
関東に向って来てるのだから…。
するとこの慣れ親しんだお城ともおさらばだ。
折角色んな廃材を集めて作ったビニールハウスだが、それが台風の前では為す術もない。
いよいよ近づいてきたら最寄り品だけを持って逃げなければならない。
しかし本当のところは勇の事を悩んでいるのだ。
まさか勇までを危険にさらす事は出来ない。
とすればいよいよ今夜でお別れだ。
明日には親元に返してやらねば……。
そうなると今夜が最後の晩餐だ。
そう思って今日はありとあらゆる自分のシマを回って御馳走を調達してきたのだ。
「さあ 勇。晩ご飯だぞ!」
努めて明るい声でサムが勇を手招きした。