エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
勇とサムはすやすやと眠りについていた。

昨夜半から風が強くなり、どうやら直撃は避けられないと分かった時点でこれからの事を判断しなければならないサムだったが、どうしても勇を手放す事が出来そうにない自分を持て余していて朝方まで眠れずにいたのだ。

廃材で出来たこのビニールハウスが強風で煽られガタガタ鳴る不安も伴って、益々サムはこの家も勇も手放したくないと年甲斐もなく涙しながら眠りについた。

勇もまた不安が募り、今ではお守り代わりになっているケータイを握りしめている内に知らぬ間に親指で電源ボタンを押しっぱなしにしていて偶然にも電源が入ったのと、眠りにつくのがほぼ同時だったので、この時点ではまだ勇はその事に気付いていなかった。


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