エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
台風が近づいていても、都会の交通機関はなかなか遮断しない。
飛行機は例外でかなり早くに欠航を決めるが、バスや電車は割りと直前まで動かさないと街に彷徨う人々が溢れてしまうからだ。
しかし、そのバスは比較的空いていた。
行き先が行き先だけに、普段もあまり利用者がいないようだった。
こんな日にバカンスで会社の保養所を利用したり、老健施設やフリースクールの面会に訪れる物好きはそういないハズである。
ところが、発車直前に乗り込んできた女の子は恐らく高校生だと推察され、フリースクールの子かもしれないな…と命の父は想像した。
しかし、丁度通路を挟んで反対斜め前に座ったその子をなんとなく観察していると、表情がとても険しい事に気が付いた。
妻もその子が気になるようで先程からジーッと見ているので
「フリースクールの子かな?」
と耳打ちした。
「そうでしょうね。でもこんな日に一人で心細いようね。」
恐らく妻はバスを下車したらあの子に声を掛けるだろうと命の父は考え、でも怯えた表情というよりは何かを思い詰めている顔ではないか?と思った。
―いかん、職業病だ。
命の父は本当は精神科医になりたかった事をそっと思い出していた。
飛行機は例外でかなり早くに欠航を決めるが、バスや電車は割りと直前まで動かさないと街に彷徨う人々が溢れてしまうからだ。
しかし、そのバスは比較的空いていた。
行き先が行き先だけに、普段もあまり利用者がいないようだった。
こんな日にバカンスで会社の保養所を利用したり、老健施設やフリースクールの面会に訪れる物好きはそういないハズである。
ところが、発車直前に乗り込んできた女の子は恐らく高校生だと推察され、フリースクールの子かもしれないな…と命の父は想像した。
しかし、丁度通路を挟んで反対斜め前に座ったその子をなんとなく観察していると、表情がとても険しい事に気が付いた。
妻もその子が気になるようで先程からジーッと見ているので
「フリースクールの子かな?」
と耳打ちした。
「そうでしょうね。でもこんな日に一人で心細いようね。」
恐らく妻はバスを下車したらあの子に声を掛けるだろうと命の父は考え、でも怯えた表情というよりは何かを思い詰めている顔ではないか?と思った。
―いかん、職業病だ。
命の父は本当は精神科医になりたかった事をそっと思い出していた。