エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
モチロン台風の情報を得る為にテレビの電波を朝から垂れ流しの状態にしていた事もあったが、望はもしもに備えて、この弥生からの手紙を持ったまま美佐子の待つ車に乗りたくはなかったのだ。

乗ったが最後、どこかに連れ去られる危険はないと思うが一応、夫にメールで知らせておく必要もあった。

しかし、ケータイを持つ手が震えてなかなか巧くボタンが押せない。

仕方ない。

余計な不安をかけるかもしれないが、とりあえず空メールを送っておこう。

望は空メールを送信した後、ケータイをジーパンのポケットに入れて、弥生からの手紙を折り畳んで置いている新聞の中に紛れこませて外へ出た。

念のために家の鍵も掛けながら

台風に、中条の使いの女との約束、弥生からの手紙、そして美佐子の訪問。

今日は何という一日なのだ。

押し寄せる不安が焦りを呼んで鍵を掛ける手も小刻みに震えた。


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