エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
(勇、お前はなんて勇敢で強いヤツなんだ。俺はそんなお前に依存して恥ずかしい大人だ。このまま二人とも助かるのなら、俺はお前の幸せを考えるよ。そして俺もまたやりなおすからな。)

サムは西田の体をガッチリ掴んで運ばれる間、そう考えていた。

そしてサムは無事に対岸へと運ばれた。

「よし!次は少年だ!」

誰もがそう思った瞬間、勇の掴んでいる枝が折れ、勇が濁流の中に飲み込まれていった。

誰もが一瞬フリーズして動けずにいたが、サムはポケットから勇のケータイを取り出すと西田に預け、自ら濁流へと飛び込んで行った。


(アイツは泳げないんだ。)

この時のサムはずるくて弱い大人ではなく、純粋に勇を助けたい一心だった。

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