エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
―良かった。非通知で掛けて。

でも、なぜ消えた?

あっ!それは単純な事だ。

勇は戸籍を持たないし、きっとホームレスの男性も保険証がないだろうから実費でかかるしかない。

そうか……。ある意味、カゴの中では守られていたのだ。

それが今、勇はまる裸の赤子同然。

今まで無事だっただけでも、やはり奇跡なのだ。

……火菜は?

火菜は無事だろうか!?

望は突然湧いた不安な気持ちを抑えることが出来ずに今すぐ電話しようとケータイを手に取った。

しかし、初めて掛ける我が子のケータイは無情にも不通で、更に望の不安は増すばかりだった。

時刻は13時半。

(とにかくココに居ても何もする事がない。まだ早いがスパへ行こう。)

同じ母親として、今、弥生に助けを求めたい望だった。
< 252 / 363 >

この作品をシェア

pagetop