エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
アイスドール
― 時は遡り一週間前 ―


埠頭にたたずむ男がいた。

その男は自分の甘さに嫌気がさしてこの場所に来ていたのだが、しばらく海を見ているうちに益々自分がちっぽけな存在に思えてきた。

「あの母親の強さはなんなんだろう……。」

かつて自分が家が貧しくてイジメられていた時に俺の母は、いつも見て見ぬフリだった。

父親が独自の思想を持って世間から孤立していた為にまともな職に付けずにいつも貧しかった。

そしていつもイラついていた父親の機嫌をそこねないようにするのが自分の仕事と言わんばかりに、いつも母親は気を張っていたので子供たちに気を配る余裕がなかったのだろうか…。

父親は特に学校教育の在り方に不満を持っていたので、参観や運動会には一度も親が来た事などなかった。

今思えばそれで俺までがイジメられていたのだろう。

異端児の子は異端児だとレッテルを貼られていたのだ。


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