エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

野田も覚悟を決めた。

――今の梓の様子では、どんなに頭を下げようと許してはくれないだろうが……俺には時間がない。

そして今、渡さなければ一生、梓にも会えないだろう……と思った。

「梓。君の両親は本当に素晴らしい人たちだった。俺はそんな二人に甘えて、借金を負わせてしまったばかりか、死なせた。その上、幼い子供たちは道連れに、君は一人になった。本当にすまなかった。」

「今更誤って貰っても困るんですよ。はっきり言ってアナタを憎んで恨んで生きてきましたから…。」

すると再び弥生が割って入った。

「これはねー決して綺麗なお金ではないかもしれないけど、あなたの為に野田さんがせっせと貯めたお金だから受け取ってくれないかしら……」

おずおずと弥生が通帳を差し出した。

すると意外な事に梓はそれを受け取った。

そして、

「その代わりアナタも中条氏の想いを受け取って下さいね。本当に死ぬ間際まで、彼はアナタの心配をして亡くなられたのですから……」


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