エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「うるさいな。判ってるし…。でも私だけ生き残ったんですよ。私だけ……だから私が復讐を果たすの…。」

「梓さん、ご家族はそんな事望んでませんよ。そして、もちろん中条もね。」

梓は弥生に優しく諭されると、自然と中条の最期の言葉が思い出されてきた。

「ありが…とう…きみがいて…くれて、ほんとう…にかんしゃ……してるよ。きみの…ことがしんぱい…だ。ぜったい…ふくしゅうは…かんがえ……ないで。………きみのこと…みまもって…いる…か…ら……。」

梓の脳裏に突然蘇った中条の顔。

『復讐は考えないで……』

と息を引き取る直前に最後の力を振り絞って私に哀願した。

梓は、

「ごめんなさい…お父さん。 お母さん。ゴメンね。お姉ちゃんにはやっぱり出来ないよ。」

そっと野田から離れると望にメスを渡した。

「梓!?」

「梓さん ありがとう。」

「梓さん よく考え直してくれたわね。」

望が大ぶりのハンカチでメスをくるむと自分のバックに急いでしまいながら言った。

梓は両手で顔を覆うとワーワーと声を上げて泣き出した。


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