エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「イヤーっ!野田さんが……!!」

弥生の声が車内に虚しく響き渡った。

野田を連れ去った車を追いかけようにも、弥生はもう20年近くも車の運転をしていないし、望も今は幾分かはおさまっているとはいえ、台風の最中に慣れない外車を運転するのは一瞬躊躇した。

すると梓が素早く、車外に出て運転席に乗り込んだ。

「慣れてないので、下手ですけど……我慢して…。」

モチロン、弥生と望に異論はなかった。

「お願いするわね。」

弥生が言うと同時に梓は車を急発進させた。

キキィーーー!!


追跡は遅れたが、追いつこうと、梓の意気込みは充分過ぎる程感じられた。

少なくとも今の梓の頭の中には、野田を救う事しかなかった。


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