エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

結局、勢い良く飛ばしていた、梓の運転する野田の車も、野田の拉致された白いワゴン車に追い付く事が出来ずに、動く事すら出来なくなった。

見渡す限り暴風雨の中で、完全に視界も遮られ、今どこにいるかさえ判らない。

このまま少しでも動けば、海に落下するかもしれない。

海岸沿いにいる感覚が、水浸しになっている道路と相まって、今にも足元を救われそうな気配に梓はアクセルから足を外しシフトをPに入れるとサイドブレーキを引いた。

「ゴメンなさい。もう私これ以上……」

梓は頭を叩きつける様にハンドルに突っ伏した。

「仕方ないわ。これじゃあ危険過ぎる。」

弥生は自分に言い聞かせるように呟いた。


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