エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「もう、止んだみたいだな。」

サムは隣りの勇に声を掛けた。

「うん。よかったね サムさん。 ひなのところにいけるよね?」

「……ああ 行けるとも。」

サムは勇をガッカリさせない為にそう言ったが、実は内心とても困っていた。

源から聞いた家はハマだ。ここからとても歩いて行ける距離じゃない。

しかし、今、全くお金を持っていないのだ。

勇がスヤスヤと寝ている間も、ずーっと考えていたが、名案は浮かばなかった。

タクシーでそこまで乗りつけようか……?

それとも、あそこに掛かっている白衣のポケットから覗く札入れから、いくらか拝借しちまうか……?

どっちにしても、恥をかくか、犯罪者になるか選択したくない案だ。

どうにか良い方法はないか!?

その迷いが二人の出発を遅らせていた。

そこにドアを開ける気配がした。


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