エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

ブゥーブゥーブゥーブゥー…

「まぁ!レッドコードよ。」

美佐子と黒沢が、病院の正面玄関から中に入ってロビーを横切っている時にその不気味なサイレンが鳴りだした。

「なんですか?レッドコードって。」

美佐子はほら見てと玄関先に顎を突き出した。

すると、今、来たばかりの正面玄関の自動扉は閉ざされたまま、中に入れない人、外に出られない人で溢れている。

「何か緊急事態が起きて、病院が封鎖されたのよ。」

「えっ!そいつはヤバいでしょう。」

「伝染病か或いは何者かに寄って病院が占拠されたかもしれない。」

「……………。」

「嘘。嘘よ。事務長に確かめてから、父の病室に上がりましょう。どうせ確かめて来い!って言われるわ。」

どんな時にも動じない美佐子には、かなわないなぁと黒沢は冷や汗をかいた自分を恥じた。


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