エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「逃げられました。怪しい男ですよ。ご覧になります。」

事務長はテレビを付けると、DVDを再生した。

それは昼間に、民放のワイドショーを録画したものでホームレスの親子のドキュメンタリーだった。

「この親子がうちの病院に運ばれて来たんですけど、検査中にいなくなったんですよ。そしたら仮眠室に潜伏していたみたいで、うちの職員の白衣を着て何か悪さをしてたみたいで、面会時間の20時を回ってましたので、病院を封鎖して捕まえてやろうと思ったんですがね……逃げられました。」

美佐子は事務長の話を聞きながら、目はテレビに釘付けになっていた。

勿論、隣りの黒沢もだ。

画面には、探し求めていた勇がいた。

しかも、自分たちとここでニアミスしていたとは……。

美佐子は悔しい思いを抑えながら

「それで、何の悪さをしたんですか?」

と聞いた。

「まあ、被害は職員の財布から一万円取られただけですがね。」


事務長はバツが悪そうに頭をかいた。


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