エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「そうですか。それで警察には?」

「ああ、これからですよ。」

思い出したように事務長が言うと、美佐子は黒沢に目配せして、あるものを出させた。

黒沢は普段から持ち歩いている特別な財布から入っている札を全然抜き出すと、美佐子に手渡した。

「事務長これを……どうぞ。」

「な、なんですか。」

「病院の体裁を保ちたいなら、吉永の事もホームレスの親子の事も警察沙汰はお止めになった方がよろしいのでは……。」

札は50枚程ある。

どうせ吉永のような不良医師は消えてくれてせいせいしている。

あのホームレスも別に警察に届ける事はないだろう。

事務長は得意のソロバンを頭でカチカチと弾くとすぐに返事した。

「判りました。」


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