エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
最後の夜
《21:00〜》
シンガポールは1時間の時差があるので、チャンギ空港は20時を回った所だった。
搭乗の手続きを終えた源は気持ちが早るので飛行機に乗りこもうとした所にケータイが鳴った。
「勇だ。危ねえ〜危うくケータイの電源を切る所だったぜ!」
源は一人呟きながら、通話ボタンを押した。
「ハイ。もしもし勇か?」
「うん。おっちゃん 勇だよ。おっちゃん いつ かえってくる? あした?」
「ああ、明日の朝早く着くぞ。待ってろよ。火菜と一緒に。」
「うん。わかった。ぼく、火菜とけっこんするよ。 おかあさんと火菜と 3人でくらすんだ。」
源は一瞬、返事に困っていた。
――火菜には彼氏がいるぞ……そうか勇はそれを知らないから……
すると勇が
「ぼくたちは けっこんできるんだ。 だってきょうだいじゃない ってお母さんが教えてくれた から」
と言った。
「何!?それは本当か!?」
「ほんとだよ。ああ、電車がきたから のるよ おっちゃん まってるね」
プーップーップーッ……
電話は一方的に切られた。
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