エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

《22:00〜》

火菜が家に着いて小一時間が経とうとしていた。

ここ数日間の疲れと、今日あった様々な出来事を思い出しているうちに火菜はソファーでウトウトしていた。

そして、

ピンポーン♪

チャイムの音にはっとして飛び起きて玄関へと走った。

覗き穴で確認すると、懐かしい勇の顔が見える。

「勇、勇……」

鍵を開けるのももどかしい程に慌てて火菜が扉を開けると、そこには懐かしい勇が照れくさそうにはにかんで立っていた。

「火菜、火菜」

二人は抱き合ってお互いの無事を確認した。

「勇、良かった無事で……本当に良かったよ。」

「火菜、あいたかったよ。こわくなかった?」

「私は大丈夫だよ!それより勇は……」

火菜はやっとで少し離れた所で二人を見守る視線に気がついて、勇から離れると

「こんばんは。」

と言った。

相手も

「こんばんは。」

と言うと、勇が

「火菜。サムさんだよ。ぼくのこと たくさん たすけてくれたの」

と満面の笑みを浮かべて言った。


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