エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「そうだったんですかぁ。勇がお世話になりました。助けてもらってありがとうございました。」

火菜はサムに向かって深々と頭を下げた。

するとサムも目尻が益々下がって

「そんな俺の方こそ、勇に随分助けられて……でもあなたも無事で良かった。」

と言った。

火菜は

「さあ、それじゃあ二人とも中に入って。母たちは出掛けてますが食事の用意はしてありますよ。」

と促した。

勇は

「サムさん、入ろうよ。火菜、ぼくたち お腹ペコペコなんだよ」

とサムに駆け寄った。

するとサムは遠慮して

「私は今日の所は帰ります。なぁ勇、火菜さんとゆっくり話せや。」

と勇の背中を押した。

「サムさん かえるうち ないんじゃないの?」

心配する勇に

「バカだな。俺にだって友達の一人や二人いるから、折角ハマまで来たんだ寄ってくよ。」

と嘘をついた。

―こんな俺を泊めてくれる友人なんていない。どこか近くの公園で寝て、明日、源に会うんだ。俺は犯罪者だ。

コイツらを巻き込めねえし…………。


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