エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

「やっぱり久しぶりの我が家はいいなぁ。」

病院から戻った大輔は食事のあと風呂に入り、ブランデーを飲み出した。

慌てて美佐子が

「お父様、まだお酒は控えた方が……。」

と止めようとしたが

「タバコはダメ。酒もダメじゃ余計にストレスがたまる。少しぐらいはいいだろう。」

大輔が聞き入れそうもないので、美佐子は

「じゃあ少しだけにして早めに休んで下さいね。」

といい自分たちの部屋に引き上げようとした。

「もう上がるのか?」

「はい。明日の事を黒沢と打ち合わせしますから。」

「そうか……判った。しかし、余計な事はするなよ。取引をするんだぞ。」

もう一度、大輔は念を押した。

「判ってます。それじゃあおやすみなさい。」

「ああ、おやすみ」

しかし、何事もなく夜が明ける事はなかったのだ。


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