エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

その頃、中条家の屋敷の中でも、一つの命が消えようとしていた。

大輔が胸に激しい痛みを覚えてもがいていた。

やっとで掴んだ子機で美佐子の部屋にコールして力が尽きた。

手元にしっかりと握られていた子機からは無情にもコール音が鳴り響くだけだった。

美佐子が大輔の死に気がついたのは、翌朝早朝で、すでにその体は固く、冷たくなっていていた。

「お父様。どうして……どうして……ごめんなさい。」

突然の父親の死に触れて、美佐子が我を忘れて号泣した。

黒沢がそれを後ろから抱きしめてやった。

すると美佐子は益々、声をあげて子供のように泣くのだった。


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