エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
「命クン。予備校に行ってるんだって?」

源がタバコをふかしながら命を見た。

「はい。あの後、もう何も手につかなくてしばらく沖縄の祖父母の家で暮らしてましたが、火菜と勇君のように必死で生きたくなって、結局、俺も医者になりたくなりました。だれかの為に粉骨砕身になってみたくて……」

「偉いね。よく立ち直った。いや〜私も建設現場で働いてますよ。もちろん家も段ボールじゃない。勇のやつに色々と教えられましたから、残りの人生、真っ当に生きるつもりです。でも源さんはまたシンガポールに行くんですか?」

サムこと結城勲は以前のようにくたびれた感じは全くなく凛としていた。

源は相変わらず三枚目的な風貌に頭をかくクセはそのままだが、笑い顔に以前のようなくったくのなさはなく、寂しさが漂っていた。


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