エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》

どうやら掛かってきた電話は奥さんからのようで源は

「ああ、今から行くよ。」

としきりに頭をかきながら話している。

弥生がその光景を微笑ましく見ていると、脇道からフラーッと一人の男が出てきて源の後について行った。

弥生にもチラッとその男の横顔が目に入った。

その男の瞳には精気がなくトローンとして面窶れが激しかったが、弥生にはすぐに誰かわかった。

「…アナタ、なぜ?」

弥生が呟くと、美佐子と黒沢に飼い慣らされていた弥生の夫は、ご主人様の命に従い、源の背後からナイフを降り下ろした。


「イヤー!!止めてぇ〜」



「……私を裏切ったら絶対に許さないから……」

美佐子の高笑いが木霊した。



―完―
< 361 / 363 >

この作品をシェア

pagetop