エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
どうやら掛かってきた電話は奥さんからのようで源は
「ああ、今から行くよ。」
としきりに頭をかきながら話している。
弥生がその光景を微笑ましく見ていると、脇道からフラーッと一人の男が出てきて源の後について行った。
弥生にもチラッとその男の横顔が目に入った。
その男の瞳には精気がなくトローンとして面窶れが激しかったが、弥生にはすぐに誰かわかった。
「…アナタ、なぜ?」
弥生が呟くと、美佐子と黒沢に飼い慣らされていた弥生の夫は、ご主人様の命に従い、源の背後からナイフを降り下ろした。
「イヤー!!止めてぇ〜」
「……私を裏切ったら絶対に許さないから……」
美佐子の高笑いが木霊した。
―完―