エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
美佐子は立ち上がると今度は冷蔵庫から缶ビールを2本持ってきた。

どうやらまだ続きがあるらしい。

黒沢もじっくり聞く構えだ。


私はほとんどのワルさをやったけど決して仲間は作らなかった。

いつも“一匹狼”でいた。

でも高校の頃、私の様な男に出会ったの。

単独行動だけどみんなから一目置かれてて、私も彼とはよく話したわ 放課後二人でね。

「それがあの吉永医師ですか?」

「そうよ!シンよく分かったわね。」

アイツもまた心に“闇”を抱えていたから馬が合ったの。

あぁ!でも恋心はなかったわよ。

アイツはひと回りぐらい年上の人妻と付き合っていたしね。

でも高校の頃は賢くて孤高の人だと尊敬してたけど、医学部に入っておかしくなったのよね。

人の体にメスを入れる事で何かのスイッチが入ったのかしらね…。

正真正銘の“切り裂きジャック”になってしまった。

それでも私はただ一人の友人として吉永の尻拭いをかなりしてきたわ。

だから私がピンチの時は助けてもらうの。

ただ、夫・清彦の死はあきらかに実験によるものだった。


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