エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
 生きているのか…。


 死んでいるのか……。


私は二人を繋ぐ唯一のライフラインであるケータイで勇に発信してみるしかない。

でも日に何十回と勇へと発信しても、無情にも返ってくるのはオペレーターの声で

『お客サマのおかけになった電話番号は、現在、電源を切っておられるか、電波の届かない所にいらっしゃいます。』

を繰り返すだけだ。

私はその度にがっかりするが、一方でまだケータイが生きてる事にホッとする。

ケータイの無事イコール勇も無事と思う事で私は精神のバランスを保っているのだ。

そのケータイに夢中になっている所に不意に後ろから声を掛けられ、私はとっさに『未来』になりきれず『火菜』と呼ばれてやっと我に返ったのだった。

モチロン『ヒナ』はあだ名だと言ってあるが…。


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