エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
私がもらったばかりの腕時計をして玄関先で靴を履いていると、両親は見送りに出てきて笑顔で

「いってらっしゃい。」

と送りだしてくれた。

そしてこれが家族とのお別れになった。

遺体で発見された時、弟も妹もサンタクロースに貰った生涯最後のプレゼントを握りしめていた。

勿論、私には腕時計がラストプレゼント。

遺書には、私はもう小学生でしっかりしているから道連れにするのは可愛そうだから…と書いてあったが、私は一人取り残された方が辛かった。

あんなに仲の良い家族だったのに、どうして…?

私を一人にしないで……

私はその時に一生分の涙を流してしまったのだろう。

もう誰も信じられない。

そしてお金にだけは負けないと思った。

後は、親戚の家で『可愛げのない子』と言われながらも取りあえず置いてもらって、高校は迷わずに全寮制の看護科へと進んだ。

幸いそのくらいの学費なら両親の借金を支払って残った保険金でなんとかなったから…。

でもそんな過去があるから『お金』に執着してるのかもね!

結局はワタシお金に負けているのかもしれないね。

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