エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
裏稼業で私は『ブラック・エンジェル』と呼ばれているらしい。

普通ナースといえば『白衣の天使』と言われるのにブラック・エンジェル!? 上等じゃん!!

むしろ本当にも黒のナース姿で働きたいぐらいだよ。

あぁダメじゃん!

また意固地になってる。

あの人と約束したのに…。
これからは前向きに生きるって…。

\43,698,705‐の残高の預金通帳を私に託して亡くなった『中条 清彦』と。

彼だけが私の裏稼業を知って

「自分をもっと大事にしろ!」

と言ってくれた。

もし父親が生きていたならこれぐらいかなと二人を重ね合わせたりした。

だから彼が末期のガン患者だと知った時はかなり落ちた。

しかし、彼は

「俺は今まで悪い事ばかりやってきたから自業自得さ。それに病気になって初めて人に優しくしたいと思えるようになったんだ。残された時間は僅かだけど、大切な人に何かしてやりたいと今は思えるんだ。」

中条氏は日に日に弱っていったけど、私は空き時間をみつけては話しをしに病室を訪れた。

そんな中条氏を見舞う人などいなくて奥様も何度か見かけた程度だった。

そして奥様は人を寄せ付けないオーラを発していて、

(この人も何か“心の闇”を抱えているのかもしれない。)

と感じた程だった。

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