エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
だからさっき喫茶室で出くわした時はかなり焦った。

奥様には内緒の通帳を隠し持っている後ろめたさも働いたのだろうか…。

とっさに知らんぷりしてしまったので怪しまれたようだ。

遠くに座ったのに痛い視線を感じた。

しかしやはりあの二人は繋がりがあったのだ!

本来、内科の患者を外科医が担当する事はない。

しかもヤツは『切り裂きジャック』だ。

やたらと患者を切りたがるので、本当は外科部長も頭を抱えてるのに巨大なバックボーンのおかげで首の皮一枚でここにいる。

そして最悪な事に私の“客”でそれもかなりの常連だ。

でももうお断わりだ。

あんな殺人鬼には指一本ふれさせない。

だって私は中条氏の死の真相を知っているから…。

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