エア・フリー 〜存在しない私達〜《後編・絆》
それから一時間程のち、私は引継ぎを終え、再び中条氏の病室を訪ねてみた。

そこにはもう、奥様たちの姿はなく自力で起き上がりベットの上であぐらをかいている中条氏に私は驚いた。

中条氏が私を確認すると「丁度良かった。今、君を呼び出そうかと考えていたよ。」

心なしか顔色もよく精気の感じられる今の中条氏は話し方まで力強くなっている。

「私、丁度見ちゃいましたよ!アナタの想い人。」

私が冷かし半分にそう言うと、中条氏は頭を掻いてハニかんだ。

「そうか!見たのかぁ〜。どうだった?」

「とてもお綺麗な方ですね。」

「そうだろう!綺麗なだけじゃなくとても心が優しくて強い。」

「理想の女性ですね。」

「あぁ…!」

このまま彼女の話しを続けていたいが、大事な本題が待っている事を二人とも分かっていた。

中条氏が急にやれやれというような顔で切り出してきた。

「実は君に頼みたい事がある…。」


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