雨上がりの空に…
信号待ちをしていた交差点で、よく知った1台の車が停まる。
「乗れよ。」
窓を半分だけ開けて、車の持ち主は当然のようにわたしに声をかける。
さしていた傘を閉じ、滴を払いのけ車に乗りこんだ。
ふあっと香る車のエアースペンサーは、1年前と変わらないローズの香り。
1年ぶりに会った彼は1年前と変わらずの笑顔で。
「久しぶり。」
大好きだった声でそう言った。
この1年。
忘れようとしても忘れられなかった。
2年も付き合っていた…。
それだけじゃない。
そのはにかんだ笑顔に。
そのちょっと高めの声。
強引に引き寄せる腕が。
強引にキスされるのが。
大好きだった―。