【短編】朝露を身に浴びて
ある日
クマの家族が何かを話合っていた。
どうやら今晩、人の町で食料を調達してくるとのことらしい。
「住処を奪われるだけならまだよかったんだ。私たちが移動すれば済むからね。でも食料はそうもいかない。ミンナが一ヵ所に集まればどうしても足りないんだよ。」
(やっぱり畑を探すのかい?)
「うん。」
引き止めようかとも思ったけれど、何て言えばいいのかわからなかった。
引き止めたかったのは人としてのボクなのか…。
その夜、彼らは畑を求めて人里へ向かった。
機械音よりも虫たちの鳴き声が大きくなった頃。
きっと明日の昼にはニュースになるだろう。
襲われた民家。荒らされた畑。不安、不満を口にする住民。
【被害者】としてそれらの映像が流れる。