[ ne・o-Child ]
ドアを開けるといつもの柔らかな笑顔。
「あっ、おかえり~櫂(カイ)。わっ、臭っ!!」
鼻を指ではさんで、春樹(ハルキ)が恨めしそうに俺を見た。
「この子…誰? 死んでるの?」
「まさか、死体なんか持って帰るわけないだろ。気を失っているだけだよ。よっと。」
俺は肩に乗せた汚いガキを床に下ろしてもう一度そいつの顔を眺めてみた。
寝顔はやっぱりただの幼い子供にしか見えない。
(被害者だよな……たとえ沢山の人間を殺していたとしても―――)
「さて、どうしようか?とりあえずお風呂入ってもらわないとね。僕、無理……」
鼻をつまんだまま涙目のハルが笑える。
「ははっ。シャワーだしたままバスタブに付けておけばそのうち目が覚めるだろ?服は…お前の貸してあげて。」
「うん。わかった。さぁ、移動移動。うわぁ~、軽い。あっ、臭っ!!」
「あははっ」
「笑わないでよ。櫂が運ぶ?」
「遠慮します。」
ハルがガキを抱き上げバスルームに運んで行く後ろ姿を見ながら遠いいつかの記憶がふと頭をよぎった。
ハルもまた被害者の1人だった。
家族を目の前で殺され言葉を失っていた。
今ではしゃべれるようになったが、血を見るとその時の記憶を思い出すのか……卒倒する。