神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
二人を追いかけて庭へ出た晴明を前鬼達は制止した。


「そろそろ時間切れです旦那。」


「ああ、楽しかったぜ旦那!俺達が自我を無くして暴れ出す前に戻してくれよ。」


笑顔で最後の挨拶を交わした彼等は、その姿のままでの別れを望んだ。
そこに居るのに判らなくなる…それは事実上の別れと何も変わらないのだ。


「分かった!それではさらばだ友よ!言葉は交わせずとも心は一つ。」


晴明は笑顔でそう返すと前鬼達を戻す印を切った。


そして彼等は光に包まれて呪符へと戻っていった。


晴明はその姿を見るのが辛くなり、満天の星空を見上げながら再び一言ありがとうと呟いた。
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