神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
彼はある日、人間達が進化していく毎に何かを犠牲にしている事に気が付いた。

それは無限の寿命を持つ神から見たら一瞬の出来事だったかもしれない。
しかし、人間達に敵がいなくなった時には、既にスサノオの知る緑溢れる世界は無くなっていたのだ…。


自分達の暮らしやすいように作り替えられた自然、一日の命を繋ぐ以外の無駄な殺生、そして同族で争う愚行による環境汚染…。

いつしか人間は自分達が神に祈る事すら忘れて、傲慢の限りを尽くしていたのだ。


「何故、神の創りし大地を汚す…お前達にその権利など最初からあるはずは無いのだ…。」


そう小さく呟いた言葉こそ、スサノオが人間達を裁く決意を決めた真意だった。

…彼は何も無く人間を憎んだりはしていない、彼は緑溢れる大地が好きだった。
野山を駆ける動物達、青く透き通った海を泳ぐ魚達を、そして静かな空を華麗に舞う鳥達までも。

彼にとっては人間も動物達と何も変わらない存在で愛していた。
だからこそ、今の絶滅に向かう世界に変えた人間達が許せなかったのだ。

スサノオはギリッと奥歯を噛みしめながら目を閉じた。


「例え今すぐに気付く者が居ても遅いのだ…。
お前達が今の生活を捨てない限り、確実に大地は滅ぶだろう。
我はその前に天地創造をやり直す…。自ら招いた代償を、その身をもって報いるがいい…。」


ゆっくりと目を開いたスサノオの瞳には、憎悪の炎が赤々と灯っていた。
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