神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
そして一同の顔を見渡した後で、二つ目の説明へと移行した。


「そして伊勢神宮…。そこはワシが先代からの申し伝えで聞いておった天岩戸の出現予測地なのじゃ。
…遙か昔の天照大神の伝説に現れる天岩戸、そのシナリオは実話と異なる。」


透はそれを聞いて少なからず衝撃を受けていた。


(天照大神の伝説…。前にチラリと聞いた事があるけど、詳しくは覚えて無いな…。
それでも確か、天照大神が天岩戸に隠れたせいで太陽が光を失って世界が暗闇に包まれたとか、再び呼び戻すために天岩戸の前で踊って誘い出したとかっていう話だったよな?)


必死に思い出そうとしても、透の知識は所詮お伽話にすぎない。
透は元の言葉に耳を傾けた。


「天照大神の伝説は皆も知ってる通りの話だと思うが、実はスサノオを神界から追放した際に天岩戸を閉じた話なんじゃよ…。
その際の暗闇に包まれた世界とは百鬼夜行が行われたことを示し、宴会を開いて天照大神を呼び戻したくだりは、天岩戸の現世からの消失に他ならない。」


元は自らが守護者の先代から聞き得た情報を隠す事なく言って聞かせた。
そして長年による地形の変動に伴って、霊的密度の高い場所が伊勢神宮へと移り変わっているのだと補足した。

つまり一番そこがスサノオにとって都合のいい場所だろう…と。
< 308 / 436 >

この作品をシェア

pagetop