神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
「霊的密度が高い…?それなら日本の三大霊場と言われる場所の方が良いのではないんですか?」


沙綺はいまいち基準がわからずに、根拠はないが質問してみることにした。
しかし元は首を横に振ると、それとはまた別だと答えた。


「日本の三大霊場と言われる場所も確かに霊的密度の高い。「あの世」と近い場所じゃろう…。
恐山などはイタコの降霊など有名じゃな。
しかし、スサノオが百鬼夜行によって呼び出す天岩戸は、それよりも上の神界への扉。
三大霊場よりも霊的密度が高い場所でないといかんのじゃ。」


「それが今は伊勢神宮…だと?」


元の説明によれば、神界と言う場所は純度の高い霊気に満ちた世界であり、あちこちに扉が開ける場所があるわけでは無いらしい。

その場所ならばスサノオにとっても暴れて荒らすわけにもいかない。
元は周りへの被害を考慮した上で伊勢神宮での面会を進言したのだった。


「ここならば万が一神器が奪われてもワシ等が移動する時間がかからない…、つまり生きてさえいれば天照大神への交渉が間に合うかもしれん。」


確かに場所がどこであっても自分達が人間である以上、移動には時間がかかる。
その間に全てが終結するのを元は恐れているのだろう。

相手は大地を創りし神の1人…。
最初から勝ち目が低いのは分かり切った事実だからだ。
< 309 / 436 >

この作品をシェア

pagetop