神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
翌日、朝から御影は宣言した通りに宿の手配に取りかかった。

その間に透達は準備を進め、元は亮太を連れて幹矢と共にオマモリサマの元へとやって来た。

昨日の襲撃によって神器を奪われたショックからか、浮かない表情のオマモリサマに元は心が痛い思いだった。


「水嶋 元と申します。八坂瓊勾玉の守護者として退魔士の西の長と呼ばれております。
お会いするのは初めてですな。」


元は子供にしか見えないオマモリサマに深々と頭を下げると、礼儀正しく挨拶を交わした。

オマモリサマも手に持っていた鞠を下に置くと、元に向かい合うようにしてその場に腰を下ろした。


「ウチはただの座敷童や、そないにかしこまらんでええよ?よろしゅう。」


そう言ってペコリと頭を下げた様子に、元は可愛らしさを感じてニコッと微笑んだ。


「そうは参りませぬ。長い間守護者としての重責を果たされた先輩に、礼儀を重んじるのは当然です。
貴方から見ればワシなんかまだまだヒヨコですじゃ。」


オマモリサマはその言葉に奪われた責任を感じて泣きそうな顔になった。


「ウチの力不足のせいで八咫鏡を奪われてしもた…。守護者失格や。」


「…………………。」



元は守護者としてのオマモリサマの気持ちを痛いほどに理解し、慰めの言葉をかけることが出来なかった…。

秘密を守る決意と神器を必ず守り通す覚悟が無いと守護者は務まらない。
それを奪われるという事は身を切り裂かれる思いだろう…。
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