神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
「こらこら忍、熱くなる相手が違うだろ?」


そう言って肩をポンッと叩いたのは御影だった。


「まぁ、この子は素直だからあまりからかわないでやってくれ。
…それで実際どうなんだい?こちら側としても襲撃されるまで待つほど余裕は無いからね。」


「あら…貴方は白蓮の右腕だった術者よね?鵺にやられた傷はもういいのかしら?」


「鵺…?あの時御館様を救ってくれたのはやはり貴女でしたか。御館様の話に聞いた容姿と一致していたので、もしやと思っていたのです。その節はどうも。」


そう言って頭を下げた御影に、命は首を振りながら言った。


「そんな事いちいち感謝されるほどじゃないわ。
…それよりも彼とどうしたら会えるかよね?
正直な所、今は手段が無いわ。限定空間の封印が解かれてから、彼の行動は不明なのよ。
この伊勢には間違いなく来る…それしか言えない。」


その言葉に沈黙する一同。
残りの数日はただ待つのみ…そう宣告されたのだ。

この現代社会において、この人数で人気の無い所に野宿するのは不振すぎる。
となれば御影の用意した宿に泊まりつつ、襲撃の被害を極力少なくしなければならないわけだ。

透はその無力感に唇をかみしめた。
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