神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
その様子を見ていた彩音は、決意の眼差しで忍に言った。


「しーちゃん!お兄ちゃんはきっと何か考えがあるんだよ!彩音達に言わなかったのも理由があるはず!
お兄ちゃんを信じて彩音達も出来る事しよう!」


そう言って彩音は巻物を開くと、速やかに召喚の詠唱を始めた!


「彩音…。」


忍は戸惑いの表情で彩音を見ていたが、妹の真剣な眼差しに固い決意を感じて頭を振った。


「そうね、アイツを疑うなんてどうかしてたわ。
そんなに器用じゃないって知ってたのにね…。
わかったわ彩音、私達に出来る事をしましょ!」


忍もニヤリと微笑んで詠唱を始めた。
心が折れそうになるのを無理矢理奮い立たせて笑っていたのだ。


命は目を細めたまま様子を伺っていたが、透が変身したのを見て裏切ったわけではないと確信した。


「坊や…覚悟を決めたのね?
…最期まで見届けてあげるわ。」


命は小さく呟いて目を閉じると、妖気を全開にして妖の姿に変化した!

金色に輝く髪と瞳、まるで帯のようにたなびく九本の尻尾…。
その姿は三大妖怪と言われた九尾の妖狐の本来の姿だった。
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