神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
前鬼は突拍子もないマスターの命令に間の抜けた声を出した。


「透みたいに魂を憑依出来たら力を出せるんでしょ!?
この破魔弓はどう考えても普通の術者が扱える物じゃないわ!」


「んな無茶言うなよ!神楽の旦那は特別な儀式を経て憑依させてるんだ!
姉御は旦那の背中の術式見た事無いのかよ!」


前鬼は透の背中に刻まれた刺青が特別な術式であると説明した。

それこそが神楽一族の特別な退魔能力の真髄であり、他に類を見ない唯一の証であると…。


「大体そんな事とっさにやれと言われても出来ねぇよ!
せいぜい出来る事と言えば、術者と召喚獣の知覚の共有だけだ!」


「何よそれ!?」


「姉御が俺の目を通して見たり、触った情報が解るって事さ。
それでも長時間は無理だ!自分の体から意識が離れすぎると帰れなくなっちまうからな!」


忍は前鬼の言葉にニヤリと笑みを浮かべ、一言「上等よ…。」と呟いた。


「どうすればいい?それで行くわよ!」


「本気か姉御!?止めといた方が…。」


「早くしなさい!」


「へ…へい!」


前鬼は背筋をピンと伸ばして返事をすると、手短に説明した。
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