神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
「これはまた不思議な事を言う姉上じゃ。我の考えが通らぬと言うのか?
我は他の生物も伸び伸びと生きられる世界を創造しようとしているのだぞ?」


スサノオは右手を挙げると天照大神に向かって拳を握りしめた。

しかし彼女は瞳を閉じたまま涼しげな声で答えを返した。


「それは創造神が決められる事じゃ。そなたにはその権利は無い。
…神という存在は全てを等しく愛し、その行いを見守らねばならぬ。
その過度な肩入れをする考えが追放の理由となったのを忘れたのか?弟君よ。」


「全てを愛しておるからこそ和を乱す人間が許せぬのだ!」


スサノオは怒りの表情で腕を横に振って叫んだ!

透はスサノオの本心と悲しみが徐々に伝わってきて、なぜ彼がこのような行動に出たのか理解できた気がした…。


(なぁ酒呑童子…奴はもしかしたら一番慈悲深い神だったんじゃないのか?
だからこそ人間達の行いが身を裂かれるように辛かった…そんな気がするんだが。)


『へっ!下らねえ!そういうのはな、熱血バカっつーんだよ坊主。』


透のシリアスな心境は酒呑童子の一言で台無しになった。
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