神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
焔狐の魂は澄んだ瞳で語りかけてきた。

そして透は自分を取り囲むように化け狸と犬神の魂が居る事に気がついた。


「ま…まさか、父さんと母さんも…?」


透は凛々しい姿で立っている犬神の顔を見つめた。


『ああ、大きくなったな息子よ。』


『ええ、本当。やっぱり男の子、私よりアナタに似てきましたね?玄奘様。』


初めて聞く父と母の声に透は涙を流した。

家族は皆、ずっと俺と居てくれたんだ!そう思うと自然に涙が溢れてきたのだった。


しかし今は再会を懐かしむ時ではない。
透は三人に頷き返すと、天岩戸へ向かって走り出した!

相棒の酒呑童子が食い止めている間に扉を閉じなければ、スサノオを取り逃がしてしまう!

天照は最後の審判を下すためか何かを呟いている。おそらく準備が整うまでは動けないのだろう。

何とか天岩戸まで来た透は、外の様子を見るため足を止めた。


もう会う事が出来なくなる仲間達の最後の姿を目に焼き付けるために…。
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