神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
天照大神は胸の前で合掌すると、漆黒の大穴を封鎖して息を吐いた。


「愛するが故に正しき道を見失った哀れな弟君よ…。導いてやれなかったわらわを許せ。」


そう呟いて一筋の涙を光らせた天照大神は、その涙を拭うことなくゆっくりと地に降り立った。


「さぁ!八百万の神々よ!これにて荒神スサノオの裁きを終える!
時の流れを変えてはならぬ、創造神は何も望んではおらん!先の未来は神のみぞ知るとは言え、絶望も期待もしてはならぬのだ!
それを破りし時、スサノオと同じ運命を歩むのはそなた達と心得よ!!」


高らかに天照は宣言した。
そして神達は一様にどよめき、恐れを抱き、天照に敬服すると姿を消していった…。

そして残されたのは透達のみとなった。


「俺たちも裁かれるのかな…。」


『さぁな、不可侵の領域に踏み込んで暴れたんだから、何もないわきゃねーよ。』


『それならばワシや玄奘、澪も同罪。悔いはない。』


肩を並べる酒呑童子と透の背後に僧正達も笑顔で立っていた。

透は皆に頷き返すと、天照の言葉を待った。
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