神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
その言葉に僧正は目を細めた。


『結構、この機会を作ってくれただけお主には感謝しておる。
…ワシの望みはただ一つ。孫と共に居てやりたい、それだけじゃ。』


『天照大神様、この神楽玄奘の望みも同じにございます。』


『神楽澪も同じにございます…。愛しき息子と共に。』


それを聞いた天照は瞳を閉じたまま問いかけた。


「そなた達は生前、かなりの徳を積んだ善良な魂じゃな…。我のために望まずともよいのか?」


『家族らしい事は何一つしてやれないまま、一族全ての思いを押しつけた私達に何が望めましょう!私達はただ…透の幸せだけが望みなのです。』


澪はそう言って透を抱きしめると「ごめんなさい。」と呟いて涙を流した。


「母さん…俺、そう言ってくれただけで十分だから…。」


透は霊魂となって、今や感じるはずない母の温もりを…感じた気がした。


『ふむ…して、酒呑童子よ。そなたは何を望むのじゃ?』


酒呑童子はそう言われて抱き合う親子を見た後に、ゆっくり前に出てこう言った。


『おう!俺様は欲張りだからなぁ…。』
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