神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
「不動さんは沙綺達と楽しそうに海に行ったわ。沙綺と水着の女の子がどうとか言っておったのぅ。
善次郎さんも行ってきたらどうじゃ?」


その言葉を聞いてから善次郎は微妙にそわそわしてきたように見えた。


「オホン!…いえ、私は水着ギャルなどには興味はありませんが…そうですか、若が…若が…ふむ。」


「どうかしたかえ?心配は要らないから風呂にでも入ってゆっくりなさいな。」


白蓮は笑い顔がバレないように袖で隠しながらそう言った。

善次郎はあからさまに変な挙動で時計を見ると、勢いよく立ち上がった。


「おお!もうこんな時間ではないか!それでは白蓮殿、私は用事を思い出しましたので失礼いたす。それではご機嫌よう。」


「海まで気をつけてね。」

「別に海に行くわけではありませんぞ!?たまたま通り過ぎるかもしれませんが。それでは。」


早口にまくし立てると善次郎は足早に去って行った。

その背中を見て、白蓮はぎりぎりまで堪えていた笑い声を部屋一杯に上げた。
< 61 / 436 >

この作品をシェア

pagetop