神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
そんな様子を見ていた透はどちらの様子を見るかの選択に迷っていた。

部屋に残った晴明の陰陽術を見るのか、討伐隊の編成に向かう葉明についていくのかと…。


(どちらも気になるな…。でもここは自分のルーツでもある葉明について行ってみるか…。)


すでに去ってしまった葉明について行くことに決めた透は、足早に彼の後を追いかけた。


(え…と…どこに行ったんだ?帝の所とは方向が違うけど…。)


辺りをキョロキョロ見回しながら歩いていくと、廊下で話し合っている菅原道真と葉明の姿が見えた。


透は急いで話の聞こえる位置まで近づくと、黙って様子をうかがった。


「…そうか、晴明が私の手伝いに向かえと申したか。確かに一人では何かと不都合があるかもしれん、お前が居てくれた方が助かるな。」


機嫌良く笑っている道真を前にして、先程までの不機嫌そうな顔を隠した葉明も愛想笑いを浮かべて答えた。


「差し出がましい真似をしてしまったかと思いましたが、喜んでいただけるのなら本望です。」
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