神楽幻想奇話〜荒神の巻〜
葉明の言葉に対して道真はにこやかに首を振ると、葉明についてくるようにと指示を出した。


(討伐隊…とか言ってたな。名前は確か頼光?…あまり聞いたことのない名前だがこの時代では有名な奴なのか?)


透は今まで聞いた歴史を思い出してみたが、それほど印象に残ってはいなかった。


(神楽葉明の名前すら白蓮様から聞かなければ知らなかった位なんだから、知らないといってもおかしくはないか…。)


透は自分の先祖という男の背中を不思議そうな感覚で眺めていた。
強いて言うならば目の前の青年が、自分の祖父の20代の姿だと言われても信じられないのと同じ様な感覚だった。


(神楽一族の始祖…これから後に妖との間に子供を授かり、混血によって妖の力を得る特殊な退魔士を作り上げた男…。)

晴明と競い合っているということは、まだ彼が邪道視されていなかった時代ということだ。
つまりは鵺が現れるより以前…、透が見ている物はそれほどまでに古い記憶であった。
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